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左大臣助平(スケヒラ)の悩み「ツーリング その2」

 最近ホームセンターや家電量販店で、何気なく目にするシニアカー。

全て電動式でデザインを見ると、これがなかなかシャレており、性能も大層良さそうだ。相変らず腰を曲げ、背をさすりつつ歩く助平は何となく気になる。

ある日、店員にさりげなく「これに乗るには明かなる身体的欠陥がないと駄目であろうか。」と問うに、「いえいえどなたでもお乗りになれます。痴呆或いは認知症等の症状が無ければ、大丈夫でございます。」

吾が仲間達は確かに頭のネジは程良く弛んでおるが、今のところ痴呆の症状は無いように思う。

 近頃、休日ともなると経験豊かな年頃のオッサン達が、クラシックカーや大型オートバイを連ね、誇らしげにツーリングを楽しむ姿時折目にするが、助平はたと膝を打ち、「そうだ!シニアカーのツーリングは見たことない。仲間誘って前橋は弁天通りから県庁一周、10数台のシニアカーの隊列、想像しただけで胸躍るではないか。」

 さて誰を仲間に引き込もうかと、わくわくしつつ「宮痔、じゃんけんポン太、松之山親方、親方はドスが効くから先頭にしよう。皆遠慮して道を空けるであろう。オナゴも1人くらいは華やかでよいかも知れぬ。」と言ってはみたものの、助平の周囲に華やかなるオナゴなど居る訳が無い。

「中之条の山奥に、親方以上にドスの効くアネゴがおるが、仕方が無い。華やかさとは程遠いが、あれも加えるとしよう。オーそうだ!忘れるところであった。観音山のヘロ子も仲間に入れねば後が怖い。時々けっつまづいてひっくり返るが、シニアカーならひっくり返る心配もあるまい。」

 何だかんだで10数人声を掛け、メーカーの営業捉まえるやレンタルの交渉。

助平何故かこういう事になると、ペテン師もどきの才能発揮。

「未だかつて、シニアカーにてツーリングを試みた者はおらぬ。歩行に不自由をきたす者達がうち揃い、県都を彩るシニアカーの隊列。やがて県庁に達し、知事の驚きと羨望の眼差しに手を振り、エレベーターで最上階へ。レストランでコーヒー飲みつつ談笑する風景。これほど素晴らしき絵は滅多に見られるものではない。勿論新聞雑誌のネタには申し分なし。メーカーにとってその宣伝効果たるや、それはもう計り知れぬものであろう。ウンヌン・・・。」

これで決まり!しっかり人数分レンタルの約束取り付け、いよいよ当日。

 助平、精一杯の洒落っ気出して、山高帽に燕尾服という、誠に似つかわしくない出で立ちにて一同を待ち構えておると、何血迷ったか、男達は戦闘服にサングラス。女達は赤いミニスカートにベレー帽、大根むき出しヘソ丸出し。 これには助平びっくり仰天。

いくらなんでもそりゃなかろう、この場はひとまず退散すべし。と山高帽を目の下までかぶり、その場を逃げ出そうとした途端、アネゴに後ろから襟首捉まれ、「首謀者が逃げ出して何とする。我等それは大層な覚悟で望んでおる故、最後までその責を全うすべし。」と一喝されつつも、助平必死に「しかし身体の不自由なる様子、誰一人として全くうかがえず。斯様なる風体にてシニアカーに乗るのは、不自然極まりなし。」と反論するも、端から見れば悪あがき。

アネゴから「外見で中身は判断出来ぬ。我等脳ミソは既に半分不自由を来たしておるではないか。案ずるには及ばぬ、さっさと出発しなされ。」

 結局それ以上の反論は無駄あがきと諦め、隊列を組み異様な一隊は弁天通りをトロトロ流せば、思いもよらぬ子供達の歓声。大人達は皆薄気味悪がり、3歩4歩と後ずさり。

子供が喜べばまあ良かろうと、そのまま県庁へと進めれば、警備員が飛んできて、どうしてよいか判らず、「アノ、ソノなんであります、つまりその出で立ちは、本庁においては好ましくなかろうかと・・・ヘドモド。」

聞くや先頭の松之山親方「何を申すか!子供達があのように喜んでおるではないか。道を空け給え。」

すかざすアネゴとヘロコが割って入り、パンチラならぬズロースチラチラスカートで、「我等これより昭和庁舎にて【群馬ジジババ連絡協議会】の会合あり、邪魔立ては許しませんぞ。」とにらみ合い。警備員は大汗かきつつ必死に阻止。両者すったもんだの押し問答。

そうこうしているうちに黒山の人だかり。写真パチパチ、通りは渋滞、警笛プープー。

さすがに親方「こりゃあかん!一旦撤退したらどやろ。」宮痔、ポン太「今更撤退なるものか。」とむきになるが、はて助平はどこぞ!と振り返れば、何時の間にやら最後尾にて小さくなり、当人は目立たぬようにと思ったか、山高帽の下に目出し帽。これがかえって逆効果。二人共々呆れ返り「コリャだめだ!」。

 結局県庁は諦め、遊園地へと方向転換。そこでは一同多勢の子供達に囲まれ、大層な人気。男達は人相悪いが凄みが受けて、カッコイイジサマ。女達は多少薄気味悪いが、顔とイデタチは漫画の世界。大根・ズロースのゲンナリ分を差し引いても人気者。

上機嫌な彼等の中で、助平ただ1人人気なし。目出し帽から覗く目を見た途端、怯えて泣き出す子供続出。同行の母親達、怒り出し、「アンタその覆面取りなさいよ、薄気味悪いったらありゃしない。」

散々悪態つかれ、すっかりしょげ返り、覆面取れば変体連と同類の顔がバレる。

しかしこのままでは、親達に石ぶつけられそうだ。引くも進むもこりゃ地獄。やがてさり気なく、公衆便所の個室に駆け込み、それっきり出てこない。

一同が助平の消えたことに気付いたのは、弁天通に戻って一服している最中のこと。

「イヤー面白かったな、ワイワイ・ガヤガヤ…あれっ!助平がおらぬ。」

その頃助平、洋便器にまたがり、グーグー鼾をかいておったそうな。

 翌日の薄毛(ハクモウ)新聞に、そのバカ騒ぎが【県都を騒がす団塊世代の珍道中】との見出しで大きく取り上げられていたが、ろくすっぽ新聞読むことも無い彼等にしてみればむしろ幸いだったといえよう。しかしその家族達の嘆きは尋常ではなかったようだ。

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