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<<<<<< 番外編「風に向かって立つ」 >>>>>>

 上州の空っ風!昔も今も上州の風物詩に変わりはない。
但し昔のそれは、砂塵が空高く舞い上がり、あたり一面黄色に染まり、そのおどろおどろしさは、なんとも言えぬ不気味さを伴うが、しかし壮観ではあった。
特に東毛の地は、ノッペラボウと言われる程の平坦地。おまけに畑地は砂気混じりの風の意のまま、あっちにサラサラこっちにザラザラ。
耳やら目やら鼻メドやら、砂ぼこりの入り放題。なれど、当時は至って当り前の風景であった。
近年では空っ風吹くには吹くが、畑地は少なく建物多く、黄砂のカーテン今は昔。

 季節感を感じることなく迎えた新年は、息つく間もなく忽ち過ぎ去り、辺りは既に梅満開。なれど季節は忘れた冬を取り戻そうと、今頃になり雪が降ったりまた晴れたり。
そうこうしているうちに春一番。 なんとも我儘な空模様の中、吾一人風の中をコートの襟立て歩きつつ、尿意と共にふと昔の黄砂の記憶が脳裏をよぎり、懐かしさに思わずその場に立ち尽くす。
西空を見やれば、青空に雪化粧の浅間山、しかし今では黄砂の空など微塵もなし。
あの懐かしき砂埃の時代、サブロー少年は、程好い元気と悪知恵に恵まれ、オガキの頭を張っていた。

 烈風身に受け、ヨタリヨタリと風に向かいて歩む吾。
ふと幼少なりし頃の吾が姿、脳裏に浮かびたり。
幼馴染達、皆揃いも揃って洟垂れ小僧。垂れた洟、風のほこりで二本スジ。
袖はこれまた揃いも揃って、拭いたる洟でテーカテカ。

吾、皆に提案せり、
「風に向かってションベンすれば、エラくなる奴にはたかんねど」

少年H:
「ほんとーかよ、誰から聞いたん?」

吾:
 「池田ソーリ、それからキョートー先生もゆってた」

少年K:
「よせよ、サブちゃんのゆうこと信用すんな。こないだヒロちゃん肥溜め落とされたど」

吾:「あれはヒロちゃんの背が足んないから柵の下くぐっちゃったんじゃないか」

  「・・・・そんなに信用しないんなら、もう遊んでやらねーぞ。」

その一言が物を言い、結局皆揃って風上向けて一斉放水。
途端に砂塵の烈風まともに受け、結果言うまでもなく、ズボンはおろか袖から面まで小便ビッショリ。
「うわっ!きったねー」と泣きべそかきつつ、枯れ草むしり、顔だの袖だの必死にゴシゴシ。

 親には言うなと言ったところでガキのこと、三日と持たず、必ず1人くらいは親にチクル馬鹿がおり、何れ吾が親の知れるところとなり、当然のことながらゲンコツ喰らい晩メシぬき。
斯様なる苦労多き幼少期の思い出に浸り、一人ひっそり涙する。


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